
大竜ファーム Farm Letter Vol.09

趣味から壮大な夢を紡ぐ。大沢竜児の遊び心
クワガタから始まった島で初めてのしいたけ栽培
しいたけの栽培方法には大きく、「原木」と「菌床」の2通りがある。原木栽培はクヌギやナラなどの広葉樹に植菌をし、木が持つ養分のみで育てる栽培方法で、市場に出る生しいたけの1〜2割程度を占める。主流なのは、細かく砕いた木のチップやオガクズに米ぬかやふすまなどを栄養素として添加し、20センチ程度の立方体に固めたものに植菌する菌床栽培だ。短期間で安定した収量を見込め、安全な国産生しいたけを一年中いつでも食べられる環境を守っている。
伊豆七島の最南端に位置し、年間平均気温約18度と温暖な気候の八丈島で、大沢竜児さんがしいたけ作りに取り組んだきっかけは、趣味のクワガタ飼育だったという。クワガタの幼虫飼育に使用した菌床ブロックできのこがすくすくと育つことに着目し、島の気温・湿度がきのこ栽培に適しているのではないかと気づいたのだ。
しいたけ菌の研究と菌床探しに4年の歳月を費やし、こだわりの国産の菌床と八丈島の自然の恵みを利用した、おいしいしいたけ栽培が始まった。

オール八丈で産業を盛り上げていきたい
大竜ファーム 大沢竜児さん
安全な国産菌床のみを厳選
私のシイタケ栽培の道のりは、趣味で始めたクワガタのブリードからスタートしました。クワガタの幼虫を飼育するにあたって食用キノコ(ヒラタケ類)の菌を植え込んだ菌床ブロックを使用するのですが、幼虫の育成過程でヒラタケがよく育つのを見て、八丈島はキノコの生産に適しているのではないかと考えたのです。
中国からの生シイタケの輸入量は残留農薬の問題などで激減したままですが、菌床の輸入量は減っていません。成分や添加物などが明らかではない中国産菌床を輸入し、国内で生産販売している農家も多いなか、私は菌床の原材料にもこだわり、八丈島での生産に適したシイタケ菌を探し始めました。そして、国産のウッドチップを使用し、厳選した国産しいたけ菌を植え付けた群馬県のメーカーの菌床ブロックにたどり着きました。有害菌に対して薬剤防除は行わず、滅菌釜にて蒸気加熱し、滅菌処理を施した安全なものです。輸入菌床と違い、日本の菌床は、放射性セシウムや重金属、化学物質、雑菌が混ざっていないかを確認する検査が行われています。
八丈島の自然の恵みが味わいに
シイタケの菌床栽培は、同じ菌床を使っても生産する地域で味や形、食感や水分量などが変わってきます。八丈島で生産されると、温暖な気候風土と潮風、空気中の強い塩分、高い湿度、豊富に湧き出るおいしい水など、八丈島特有の味に育ちます。味がまろやかでクセもなく、肉厚で柔らか、ジューシーな味わいです。菌床を作っている群馬の工場でもシイタケを作っていますが、そこのシイタケとは味も形も驚くほど違います。
完全無農薬なので、エグ味や臭みもありません。小さなお子さんからお年寄りまで、どなたにでも安心して食べていただけます。島内のスーパーで販売されているほか、ホテルなどの宿泊施設や子どもたちの給食としても利用していただいています。柔らかい軸まで食べられるため、「普通に売られている他のシイタケとは違う」と、一度食べてくださった多くの方にリピーターになっていただけることが自慢です。
シイタケはビタミンやミネラル類、繊維質が豊富で栄養価が高く、野菜では取れにくいとされる善玉コレステロールが摂取できます。健康増進に役立ちますので、皆さんに召し上がっていただき、末長く元気でいていただければと思います。

うみかぜ椎茸のお勧めの食べ方
形が丸く、肉厚で軸が太いのがいいしいたけです。定番の網焼きで醤油をたらしてシンプルに食べていただくのが一番ですが、チーズをのせて焼いたしいたけステーキや、ひき肉を詰めてフライや天ぷらにした肉詰め、煮物もお勧めです。
しいたけ独特の香りが控えめなので、しいたけが苦手な方にも食べられると好評です。カレーやシチューなど和食以外との組み合わせにも向いています。ピザやパスタ、サラダなどにマッシュルームのように使え、アレンジレシピを楽しめます。
無農薬なので冷蔵庫で20日ほど保存できますし、量が多い場合は洗わずにカットし、保存袋で冷凍してください。調理の際には冷凍のまま使っていただけば、ひと月ほどおいしくいただけます。
新産業を生み出し、未来に継いでいく
第2工場が完成し、工場は現在ふたつです。コンスタントに安定供給できるよう、菌床を浸水するタイミングやサイクル、温度・湿度管理など、工場長と試行錯誤しています。工場長によると、「シイタケが思うように生えず、心が折れることもありました。でも、『まだ1年目だから仕方がないよ。大丈夫、大丈夫』と社長はいつもポジティブで、励まされました」とのことです(笑)。
八丈島は別名を情島というくらい、島外から来る方を温かく迎え入れる観光地ですが、8000人ほどの小さな島全体で魅力を高めていかなければ、過疎化が進むこの地に人を呼ぶことはできません。有名な特産品であるくさやや焼酎に加え、新たな食べ物を島外にどんどんアピールしていきたいですね。将来的には、シイタケだけではなく八丈島の他の農作物も一緒に味わえるバーベキュー施設を作って盛り上げていきたいと考えています。
漁協・農協などがそれぞれの垣根を超えて、縦割りではなく横割りでオール八丈として手を携え、個人の売り上げだけではなく、第1次産業から第6次産業まで一貫して八丈島全体の売り上げを高めていければいいなと思います。
八丈島でのシイタケの菌床栽培農家は私が初めてですが、新特産品になるよう、愛情込めて生産します。新産業として未来に継いでいき、八丈島の発展と雇用の創出を目指します。
ご家族でシイタケ狩りへ!
事前にご予約いただければ、工場見学(無料)や、収穫体験(有料)が楽しめます。ご自身で収穫されたシイタケを袋詰めし、お持ち帰りいただけます。
また、自家繁殖しているクワガタブリードルームの見学はお子さま方に大人気です。96ミリのクワガタから始めたブリードですが、おいしい菌床で健やかに育つクワガタは毎年親のサイズを超えて4年目、看板血統104.4ミリの「スマトラオオヒラタ」や115ミリの「フローレスギラファノコギリ」など、いずれもギネス級の大きさです。
ゆくゆくは誰もがシイタケ狩りを楽しめる観光施設を備え、観光ルートとして体制を整えて、観光名所が少ない八丈島の発展の役に立ちたいと思っています。いまはまだ趣味の段階のクワガタの繁殖にも力を入れ、展示販売ができるようにしたいと考えています。



