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記事: 山下農園 Farm Letter vol.45

山下農園 Farm Letter vol.45

山下農園 Farm Letter vol.45

 土と創る.45 根府川レモン(PDF版ダウンロードはこちらから)



果実本来の魅力を際立たせる山下一美の自然体


土と太陽と海風が育む、新鮮な有機JASレモン

 箱根連山につながる山地、丹沢山塊から続く丘陵地帯、市を南北に流れる酒匂川流域の足柄平野で形成される神奈川県小田原市。雪が降ることはめったになく、年平均16度前後の温暖な気候と適度な雨量が農産物の成長を支え、みかんや梅などの果樹栽培が盛んだ。
 昭和30年代から自然農法に積極的に取り組み、有機農業技術を継承すべく、平成20年度末に小田原市長が代表となり、地元農業関係団体の協力により「小田原有機の里づくり協議会」を発足させた。平成21年度には国が支援を行う有機農業総合支援対策による事業採択者となり、神奈川県で唯一のモデルタウンとして活動している。
 黒潮の流れる相模湾に面し、急こう配の日当たりのよい高台にある山下農園で、山下一美さんは農薬や化学肥料を使わない自然農法で60年近く柑橘を栽培し続けている。平成13年には全圃場で有機JAS認証を取得した。今日も妻の富美子さんと、昔ながらの自然な味わいが楽しめる健康なみかんやフレッシュなレモンを育てている。

朝晩の寒暖差があり、レモン栽培に適した根府川地域。先代から受け継いだ急斜面の圃場にて、結婚当初からともに農作業を行う妻・富美子さんと

→山下農園の商品ページへ

 

風光明媚な地に揺れる艶やかな樹上完熟レモン

【山下農園 山下一美さん】

レモンの収穫は注文を受けてから

 レモンの収穫時期は12月1日から3月31日ごろまでです。注文があったらもいで、すぐに出荷するので、「新鮮で香りがすごくいい」とよく言われます。果皮が厚く、もぎたてのレモンの皮を使いたい人にも喜ばれます。外国産のレモンが切れる10月末ごろまで出荷できるよう、将来的には貯蔵施設を充実させたいと考えています。年間のスケジュールは、4月に剪定、6月に肥料、4月と6月にかいよう病対策を施します。台風のときにレモンの棘で果皮に傷がついたことが原因となり、かいよう病にかかってしまうこともあります。
 レモンの圃場面積は3反くらいです。収量が多い年と少ない年を交互に繰り返す隔年結果になるから、多くて約2トン、少ないときは1トンです。
 レモンを植えたのはここ10年。親父が亡くなってから本格的に始めたので、そんなに経っていません。需要が増すかなと見越したんです。みかんの木を切ってレモンを植えましたが、最初から無肥料無農薬でできたのは、土がよかったからです。
 親父がずっと自然農法でみかんをやっていたから、無肥料無農薬を受け継ぎ、いまでいう有機農法を60年以上実践しています。その当時は農薬や除草剤をじゃぶじゃぶかけていて、「体によくない、これではまずい」と、親父が二十歳を過ぎた頃、1/3程度の圃場を自然農法に切り替え、次第にすべて有機にしたそうです。自然農法の走りですから、栽培方法も何もわからなかったし、周りは慣行農法でしたから、変人扱いされて苦労したようです。


甘さと酸味が調和したみかん

 明治の頃からこの辺はみかんの栽培をしていて歴史があり、気候が柑橘に合っています。昔はもっと寒かったけれど栽培できましたし、近年は温暖化の傾向にあります。また、火山灰地なので自然農法や有機農法に適しています。粘土層だと乾燥期に硬くなってしまうけれど、軟らかい土です。
 観光農園にすると人の出入りで土が硬くなってしまいます。湯河原のみかん農家が観光農園をやめた理由は根が生育しなくなるからです。木によくないので、観光農園をやるつもりはありません。
 夏の日照りや10月ごろの日照時間、雨量が味に影響します。昔のようにただ酸っぱいだけではなく、懐かしい味だからとリピーターがたくさんいます。甘いだけではなくて、コクもあります。
 温州みかんが中心で、主だった品種は、藤中温州や早生の宮川、晩生の青島などです。湘南ゴールドやニューサマーオレンジは香りがよくて消費者に人気があるので、育てています。デコポンやはるか、はやか、スイートスプリング、興津早生や由良早生など、この土地に合うか少量植えて試しています。いい品種でも、多肥栽培の必要があるものは、肥料を撒かない栽培には向きません。


土壌を作るミミズの敵はイノシシ

 1町3反ほどあった親父の畑を少し売却し、いまは9反くらいです。平成13年に全圃場で有機JAS認証を取得しました。有機JASでは認可された肥料は使ってもいいので、その範囲でやっています。病気は出ますが、害虫には苦労しませんでした。害虫を食べる天敵が自然にいたからです。
 土壌を作るのはミミズで、自然農法のうちの畑にたくさんいますが、イノシシが土を掘り返してミミズを食べてしまいます。柵を作ってもフェンスや石垣を壊してしまうし、数も増えているので、いま一番困っているのはイノシシの問題ですね。
 みかんが安くなった40代の半ばに造園業も始めました。造園の仕事があるときも女房がずっと働いてくれて、なくてはならない存在です。収穫もすべて、女房とふたりです。息子は造園業を継いでくれていますが、農業も継いでくれるかはわかりません。親父がやってくれたことを続けて、大事に土をつくってきているので、誰かに畑を継いでもらいたいという思いはありますが、子どもたち3人にはそれぞれの生活があるから強くは言えません。従業員を雇うなど、やり方はいろいろあるので、価値をわかってくれればと思います。


ファミリーの集いで英気を養う

 18歳で就農し、いま73歳になりました。70歳を過ぎてから、その日にやらないとまずい必要なことはやりますが、無理をしないと決めています。
 餅つきや家庭菜園の収穫、茶摘み体験など、年に3回くらいの家族のイベントに、孫8人含め、総勢13人ほどが集うのが楽しいんです。親父の後を継いで野菜畑も作っています。ほうれん草、キャベツ、ブロッコリー、大根、ねぎ、トマトなど全部、有機栽培です。にんじんとほうれん草が上手にできれば一人前ですよね。お茶も有機です。
 親父は93歳で亡くなり、一昨年が13回忌でした。ここに住んでいたから、環境もよかったと思います。親父の兄弟も94歳まで長生きしました。体を酷使しているから親父より長生きするかどうかはわかりませんが、好きなことをやっているのが一番です。雇われていたら、お客さんのいう通りにしなくてはいけないけど、自分で自由にできるということが農業の醍醐味ではないでしょうか。
 一番年上の孫は今年中学3年生になります。一番下は今年小学校に上がるので6歳です。できれば、ひ孫の顔を見たいな。それがいまの夢ですね。


4〜10月のレモン出荷を目指して

 注文があってからもいで出荷する山下さんのレモン。最後の注文は3月31日と決めているため、4月にはもぎ終わる。1〜2週間程度は貯蔵庫で保管して、残った分は畑に還元するという。
 「被害果ってあるじゃない。みんなは加工に出すけど、うちは売れない分は肥料にしちゃう。1キロ5円や15円で売るために運んでも、ガソリン代にもなりません。それより、肥料として畑に還元した方がいいから、みかんもレモンもそうしています」
 12月いっぱいで収穫したみかんは、収穫した日付や品種、数量、コンテナ数を書き、選果場の奥にある貯蔵庫で保管する。2〜3月に出荷が終わると、4月以降は容量2トンの貯蔵庫が空いてしまう。それを利用しない手はないと山下さんは考えている。
 「冬は気温が低いけれど、夏は温度が上がるので、将来的にはこの貯蔵庫を改造して冷蔵庫としての機能を持たせた施設に作り変えることを目指しています。外国産のレモンが切れる4月以降10月末ごろまでレモンを出荷できるようにしたいですね」



 

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