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記事: 金果園 Farm Letter vol.57

金果園 Farm Letter vol.57

金果園 Farm Letter vol.57

 土と創る.57 南アルプスフルーツ (PDF版ダウンロードはこちらから)



日本一の果物郷 南アルプスの豊穣の恵み


  山梨県南アルプス市は、御勅使川(みだいがわ)の扇状地をはじめとする砂礫質の土壌と、内陸性気候ならではの強い日差し、そして昼夜の大きな寒暖差に恵まれた、国内屈指の果樹栽培地帯である。水はけが良すぎて古くから稲作には適さず、養蚕や果樹栽培へと必然的に特化してきた歴史を持つ。
  この地で育つ果物は、桃、すもも(プラム)、ぶどう、さくらんぼ、柿など多岐にわたり、まさに「フルーツ王国」の呼び名にふさわしい。特にすももの生産量は桃やぶどうと並んで日本一を誇り、江戸時代から栽培の記録が残されている。
  山梨県は近年、持続可能な農業への関心も高く、土壌の炭素貯留を促す「やまなし4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度」を全国の自治体に先駆けて創設した。年間3トンもの籾殻を炭にして土に返し、堆肥や米ぬかなどの有機物を施して果物を草生栽培している「金果園」では4パーミル・イニシアチブの認証を2021年の制定時に取得、減農薬栽培へ挑戦し続け、おいしさと食の安全、環境保全を両立させる取り組みを意欲的に進めている。


フルーツ狩り(桃・さくらんぼ)を1日に1組実施。桃のシーズンは7〜8月。「1人2個までお土産用に取って いただくのとは別に、果汁が滴り落ちるくらい柔らかくて甘い桃を事前に準備して食べていただきます」

→金果園の商品ページへ


自然に寄り添い、もぎたての感動を未来へ

【金果園 手塚紀人さん】


曽祖父から受け継ぐ果樹への情熱

  「金果園」は、山梨県南アルプス市で代々続く果物農園です。私は4代目となりますが、就農前は別の地域の農協に10年間ほど勤務し、果物の専門技術や実践的な知識を学んだのちに実家を継ぎました。生まれた時から両親が農業に励む姿を見て育ったので、自分が農家になることに違和感はありませんでした。
  この地域は川がなく田んぼを作れなかったため、かつては養蚕が盛んでした。その中で、曽祖父がいち早くすももの栽培を始めたと聞いています。収穫したすももを馬車で甲府まで運び、汽車で東京へ出荷したところ、ある程度の価格で売れたそうです。それを機に、地域一帯に果樹栽培が広がりました。私が20歳の頃までは、曽祖父が植えた当時のすももの木が残っていて、2000年頃で樹齢100年ほど経っていたと思います。
  その後、祖父の代になり、出荷期間が1か月ほどと短いすももを補うために桃の栽培が始まりました。私にとって桃は「赤いもの」という強い先入観があり、岡山の「清水白桃」のような白い桃の存在は後から知りました。


化学肥料ゼロと発酵の力に導かれて

  現在、金果園では桃(50アール)、ぶどう(40アール)を中心に、すもも、柿、そして高齢で離農される方から引き継いださくらんぼなどを栽培しています。
  私たちの最大のこだわりは、化学肥料を一切使用しない独自の栽培方法にあります。20年ほど前、農協勤務時代の縁で、精米所で廃棄予定だった米ぬかを譲り受けたのがきっかけでした。動物性有機質肥料にぬかや籾殻を合わせる方法へシフトしたのですが、切り替えた当初から生育に問題はありませんでした。
  桃の木には長年蓄積された土中の栄養があったので、化学肥料をゼロにしても影響が出なかったのです。ぬかなどの有機質は3年ほど経ってからじんわりと効き始めるため、化学肥料の減少と有機質の浸透が絶妙のタイミングでかみ合いました。今ではすべての果物において、この方法を導入しています。
  また、減農薬にも真剣に取り組んでいます。かつては10年ほど、木酢液を用いて農薬を半減させていましたが、現在は静岡の魚のあらを発酵させた液体を使用しています。これを散布すると果樹の栄養を吸い上げる力が強まり、木の上で傷んだ果実すら落ちずに留まるほどで、さくらんぼや桃の味が良くなりました。安くはありませんが、確かな効果が出るため手放せません。このおかげで、防除基準から30〜40%の減農薬を実現しています。


何度も木と対話する手間暇の価値

  果物づくりにおいて、私が最も大切にしているのは、春の摘蕾から始まる一連の作業です。桃は放っておくと実をつけすぎて木が疲れてしまい、翌年の収穫に影響します。そのため、春先から何度も畑を回り、つぼみや小さな実を少しずつ丁寧に落とし、毎年安定した収穫が得られるように心がけています。
  一気に数を減らしすぎると、種が途中で割れて甘みが乗らなくなるので、生育のバランスを見極めながら根気強く回数を重ねます。摘蕾、摘花、摘果と、気の遠くなるような手間ですが、毎年美味しい桃を実らせるためには一番重要な作業なのです。
  現在、桃は「あかつき」や「白鳳」「白桃」、そして黄色い「黄金桃」など、収穫時期が少しずつずれるように工夫して植えています。メインのあかつきは、緻密で締まった果肉と強い甘み、日持ちの良さが特徴です。  本来なら20年が木の切り替え時ですが、なかには30年ほど経つ木もあります。枯れてきた太い枝を切れば新しい枝が出てきますし、私自身がこの木を熟知しているので、できれば残したい。新しい品種も試していますが、2〜3本買って5〜6年栽培してみないと、この地に合うかどうかはわかりません。将来的には品種をリレーさせ、9月半ばから終わりまで収穫を続けたいと考えています。
  かつて両親の代には、同じ畑に一斉に実る品種を植えていたため、7kgのコンテナを一日に100〜200箱も収穫しなければならず、過酷な労働となっていました。その苦労を見てきた私は、3分の1ずつ品種を変え、多くても50箱ほどの収穫量に抑えているので体も楽になり、次の作業に意欲的に臨めるようになりました。
  収穫期の朝は4時から始まります。9時頃までに収穫を終え、贈り物用や直売所用の桃を準備し、10時までに農協に持ち込みます。直売所は毎日開催されますから、いいものを少しずつ、順番に収穫していくことが大事だと痛感しています。


年に1度だけの収穫だから面白い

 近年は、地球温暖化による猛暑や、鹿による若木の食害など、農業を取り巻く環境は厳しさを増しています。しかし、自然の力に抗うのではなく、いかに受け流すかが大切だと考えています。
  例えば、今年のように雨が多い時は摘果を1週間ほど遅らせる、より薄めた農薬で2回防除する、気温が40度近くなる猛暑日には地温が上がりすぎないよう光反射シートを一時的に撤去するなど、天候に合わせて臨機応変に工夫しています。
  また、草が根を張れば土に空気が行き、刈った草は肥料になるため、畑の草は年に多くても4回刈る程度の草生栽培を行っています。草生栽培による糖度向上の効果も実証されています。
  金果園には現在、明確な後継者はいません。子どもたちはそれぞれ県内で就職していますが、我が家の桃が大好きです。いつの日か、彼らが退職した後にでも「桃づくりを教えてほしい」と言ってくれれば、喜んで教えるつもりです。近隣でも、一度外に出てから戻ってきて跡を継ぐ若い世代が増えており、地域の担い手は決して途絶えてはいません。
  さくらんぼ、桃、ぶどうと順番に収穫していく前、次は何をすべきか考えて下準備をしている時間が、一番ワクワクして好きですね。毎年気候が違うので、出来栄えは収穫前にしかわかりません。野菜は数か月おきに収穫できますが、果物は年に1度だけ。そこが苦労のしがいでもあり、ドキドキして楽しいところです。
  今年の桃は1割ほどサイズアップしていて、素晴らしいボリュームです。枝先だけでなく下枝までびっくりするほど大きな桃が実りました。普段の収穫期は作業に追われますが、これほど見事な桃が揃うことはなかなかないので、今年は収穫そのものを楽しんでいます。


 


4パーミル・イニシアチブとは、農業分野から脱炭素社会の実現を目指す取り組みです。山梨県では、『やまなし4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度』を作り、ブランド化を進めています。金果園はその取り組みに賛同し、『4パーミル・イニシアチブ農産物』として認定されています。


金果園の果物カレンダー

金果園の商品

さくらんぼ
(高砂・佐藤錦)
5〜6月


桃(あかつき・白鳳・白桃・黄金桃)
6月半ば〜8月終わり


すもも(貴陽)
6月末〜7月中旬


ぶどう(甲斐路・シャインマスカット)
9月半ば〜10月半ば


柿(枯露柿、あんぽ柿)
10月下旬〜1月



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