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記事: 佐久間権左衛門  Farm Letter vol.03

佐久間権左衛門  Farm Letter vol.03

佐久間権左衛門  Farm Letter vol.03

 土と創る.3 鶴岡亀の尾 (PDF版ダウンロードはこちらから)


無農薬無施肥の幻の米。佐久間 優の勇気


未知の領域に飄々と挑戦する鶴岡魂

「亀の尾」という米の品種をご存じだろうか。コシヒカリのルーツとされる良食味が特徴で、ササニシキ、あきたこまち、ひとめぼれ、はえぬきなど、大半の米の先祖にあたる。現在ではわずかに栽培される程度で、ほとんど市場に出回っていない。
 一方、「女鶴」という味の良いもち米が山形県酒田市で古くから栽培されていた。あまりのおいしさに、明治初期には皇室に献上されていたという。しかし、栽培が難しく、収量が少なかったため、農家から敬遠され、「女鶴を超えるもち米はない」という伝説を残して、40年ほど前にほぼ全滅した。
 「亀と鶴……、欲しい!」、大胆にもそんな発想で、希少な「幻の米」を復活させたのが佐久間優さんだ。もともと栽培が難しい二つの米を無農薬で肥料すら与えず、手塩にかけて育て上げる。おもしろがる精神で幾多の困難を克服し続け、佐久間さんのあくなきチャレンジは続く。

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種とともに生きる

【佐久間権左衛門 佐久間 優さん】



ブランドに負けない米作り

 全国的に冷害の年だった平成5年ごろから、米屋や個人のお客さまに米を直接販売するスタイルをとり始めました。当初、4トン車をレンタルして東京まで何往復も走って新米を届け、「今年の新米、おいしい?」と米屋に聞かれて戸惑ったものです。農家は普通、備蓄米を全部食べてから新米に切り替えるので、新米の試食をしません。「味見してから持って来てよ」と怒られてから、新米がとれたらまず自分で試食するようになりました。
 あるとき、新潟の魚沼よりおいしい年があり、「魚沼並みの値段で買ってもらえないか」と打診したら、「庄内の佐久間さんの米は魚沼みたいにブランドがない」と言われてしまいました。知名度を上げないとお客さまには届かない。いろいろ考え、どうせなら無農薬の有機JASのトップクラスのレベルを目指して努力しようと決意しました。
 無農薬から始めて、なかなかうまくいかないと感じていたときに、近所の自然農法の果樹農家からアドバイスを受けました。でも、試行錯誤しながら、米やブドウなど、多様な種類を栽培しているので、しっかり手が回りません。除草も効率的にできず、「肥料をやっても雑草に食われるだけだから、いっそやめてしまおう」と思いました。それが無施肥、自然栽培だということを意識せずにいたのです。平成22年ぐらいのことでした。


味がない清廉な「味」に

 有機栽培を始めようと思ったときに、山形県川西町の米農家に話を聞きに行きました。その方が食味コンクールで何回か入賞していたことをきっかけに自分も挑戦してみましたが、最初の1~2年は決勝に残りませんでした。機械による数値測定の1次審査を通過するために、たんぱく質を低くすることが絶対に必要だったのです。そういう作り方を勉強して、賞をもらうようになりました。
 そのうち、無施肥栽培に切り替えました。牛糞・豚糞・鶏糞堆肥と、作物の味は資材によって変わります。無施肥栽培にすると、米の成分が何年かかけて稲に吸われ、最終的に資材の残留がゼロになります。そうするとコメの味がどんどんなくなります。でんぷん質ですから、噛んでいると甘みはありますが、さらっとしています。コンクールで試食の審査までいっても、うま味のある米としてひっかからなくなりました。「おかずの味をごはんが吸収して、1回ずつフレッシュな舌でおかずを味わえる。飲み込むと口の中がさっぱりとリセットされる」というのが米屋のコメントです。


土壌の養分が稲を育む

 育て方は天気次第です。稲の生育にベストな方法を自然の天候の中で選んでいかなくてはいけません。数字ではなく経験が大切です。なるべく多くの方法を引き出しに用意して、「この天気だったらこの手かな」と引っ張り出して使います。方法論はたくさん持っている方がいいと思います。
 稲が育つ養分を根っこが吸収して、1/3は稲の葉っぱや茎に、1/3は実に行き渡り、残りの1/3は新陳代謝をして排出されます。その老廃物も土の中で養分になります。イトミミズやドジョウなど、土や水の中の生き物も死ねば次の年の養分になり、稲が生きていく元になります。
 穂が熟して生きている状態で稲刈りをしますが、稲という植物を切り取って殺してしまうわけではありません。種として取って、また来年もこの田んぼに植えて、子孫を残すためにやっているのです。そうやって収穫した恵みを頂戴して我々農家が生きていく。そんな風に思っています。


紅白の鶴亀で、めでたい米

 米は、亀の尾、コシヒカリ、ササニシキがメインです。亀の尾は、「東の亀の尾、西の旭」といわれた代表的な銘柄ですが、今ではあまり作られていません。3~4年前に秋田の方に種を譲っていただいて以来、自家採種で育てています。自分のところでとった種を使って、この種とともに生きていく。この種と、太陽と水と土という重要な3要素のおかげで、我々は生きていけるのです。  隣の酒田市の「女鶴」というもち米は亀の尾同様、倒伏しやすく、栽培が難しい品種です。たった1軒の農家が何十年も種を守ってきました。そこに電話をかけて、「種まきをして余ったら」という条件で種を分けていただけることになりました。座敷に上がって待っていたら、息子さんがばっと登場し、「種はやれねえ」。ドラマのようでした。「近所の数人に分けたら、自分だけがいい思いをしようとして」と懸念する息子さんに、「自然農法で栽培し、化学物質過敏症の方にも安心して食べていただきたい」と粘りに粘って、やっと片手に乗る分くらいの種を分けていただきました。  1年目は味見をしつつ種を増やすことに注力し、2年目は少量作り、3年目となる今年は4反歩くらい栽培しています。この辺は10アールあたり10俵くらいとれる地域ですが、収量が上がらず、条件が悪いと4俵しかとれません。それなのになぜ、女鶴にこだわったか。亀の尾の「亀」に対して、「鶴」はないかと探したら、近くにあったというわけです。亀の尾は全体が白っぽく、女鶴は穂の先端がピンク色だから、そろうと紅白になります。  少ない収量でひいひい言っていますから、少しはおもしろみもないと(笑)。今後は、東北の酒蔵と組んで、風土に合った日本酒も作りたいです。


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