記事: はまなす生産組合 Farm Letter Vol.02

はまなす生産組合 Farm Letter Vol.02

有機無農薬栽培31年。鈴木 譲の願い
生産者の顔が見える、下北半島の有機農産物
世界でもっとも生産量の多い野菜・トマト。雨が少なく乾燥した気候のアンデスの高地が原産地といわれている。 「トマトの野生種は厳しい環境で育ちます。農薬も化学肥料も与えない原種に近いトマトは生命力が非常に強いんです。
我々が作るフルーツトマトには、トマト特有の臭みがありません。フルーツトマトは本来、果物のように甘いからではなく、フルーツ感覚で食べられるから、そう呼ばれるんです」と鈴木譲さん。安全・安心な有機農産物の生産を目指す青森県横浜町の農家が集まり、昭和60年に設立された「はまなす生産組合」の代表を務めている。
土作りを基本と考え、農薬・化学肥料に頼らず、米糠・菜種粕・大豆粕・魚粕などの10種類以上の有機肥料を自ら成分設計して使用。良質の堆肥で地力を高めて、作物本来の生きる力を引き出す。平成14年から有機JAS規格の認定を受けている。年間を通じて旬の野菜を提供できるよう、計画的に60品目以上の野菜を作付けしているという。
左から、鈴木 譲さん、鈴木さんの妹・光さん、瀬川 廣さん、鈴木さんの母・キミヨさん、瀬川さんの息子・辰実さん、瀬川さんの妻・千鳥さん、鈴木さんの父・中さん
自然農法は自分との戦いです
【はまなす生産組合 鈴木 譲さん】
自然のサイクルのままに

ハウスの一画に、「仕事をしながら花を眺めると疲れがとれるから」と、お袋が無農薬・無化学肥料の花を趣味で植えています。作業するときに邪魔なこともありますが、そこは虫の棲み処になっています。薔薇などはうどんこ病に弱く、同じハウス内のキュウリより先に病害が出ます。慣行栽培では病気が蔓延してたいへんだと考えますが、害虫や土壌微生物、空気中の菌、雑草など、生き物が共存し、生態系の調和がとれている自然農法では、病気が必要以上に広がることはありません。
害虫は自然界のシステムにおいて、弱者を淘汰する役割を果たしています。その害虫が今度はエサになります。生態的に弱く育ってしまった作物には害虫がたくさんつきます。健康に強く育っても害虫はつきますが、作物も生き物ですから、殺されるのを黙って待っているわけではありません。植物には防衛本能があります。彼らは次の世界に子孫を残すという役割を守るため、害虫を何らかの方法で跳ね返す能力を発揮します。トマトの種にあった方法で丈夫に育ててやれば、トマト自身が防除するのです。
子孫を残すための最終的な形が「実」
現代農法は作物の実だけ見ています。無理に養分を入れるため、弱く育ち、害虫がつく。それを農薬で徹底的に抑えます。我々は実ではなく木を見ます。木が健康に育てば、子孫を増やすための最終的な形として、すばらしい実を残します。作物は自力で育ち、我々に子孫をくれているのです。
次の世代が芽を出し、生き抜く確率を高くするため、実にはミネラルなどの大切な栄養を蓄えます。その質のいい実を我々がいただくのですから、身体にいいに決まっています。農薬で見た目の形や色だけ整えた作物は芽が出る確率が低いでしょう。
有機だから栄養価が高いかというと、計れば数値は慣行栽培と同じかもしれません。でも、自然農法の作物は細胞の密度が濃く、食べたときに身体に吸収される栄養成分量が違うと私は思います。
有機農業は管理技術、自然農法は土作り

小さいころから、父が路地で作っていたキュウリやトマトを収穫する手伝いが好きでした。1回に収穫できる量がものすごくて、その喜びの記憶がずっと残っていましたが、昭和56年に農業高校を卒業し、就農しようというとき、収量がすっかり減って、両親は四苦八苦していました。天候の変化に作物がついていかず、虫もつきます。学校で習った農薬や化学肥料の現代農業で対応しようとしましたが、うまくいきません。何か別の農業技術はないのかと情報を集めて有機農業に出合い、独自に勉強し始めました。ある講演で酸性雨のことを聞き、リトマス試験紙で雨を計ってみたら、葉っぱがやけどをするような数値でした。それで、父と相談し、植物本来の生命力を生かす有機栽培に切り替える決意をしました。有機農業は管理技術、自然農法は土作りの基礎知識で、組み合わせればすごい技術になると思ったんです。
健康や環境保全のために有機野菜を食べる人が多いようですが、私はそんなことを考えません。みんなに「おいしい」と言われて、死ぬまで農業を続けたいだけです。有機の農産物を食べたからといって、長生きはできませんが、健康に寿命までまっとうできるのではないでしょうか。
自分自身との葛藤に打ち勝つ
30年ほど前に有機や自然農法を勉強し始めたとき、それまで習ったり体験して覚えたりした常識のすべてが180度ひっくり返りました。いちばん辛かったのが自分自身との戦いです。私の場合、3年は収穫ができないと覚悟を決めて過ごしましたが、専業農家として真剣に取り組んでいる人ほど、身についた常識にとらわれ、なかなか覆せないようです。タバコやお酒を断つ際に禁断症状が出るように、農薬や化学肥料をやめるのにもストレスがかかります。それを乗り越えた人だけが有機農業で成功します。
有機農業に切り替えて、目で感じる技術が鍛えられました。微妙な違いを感じとって手入れをしていく盆栽の繊細な感覚と同じです。自然を感じ、変化を観察して予測すると、アイディアが生まれます。机上の数式などの勉強だけでは農業はできません。自然界の仕組みを知る必要があります。
23年間続く消費者と生産者の交流会
有機農産物を作り始めてしばらく、周りに有機の生産者がいなかったので、いかに消費者に販売して生計を立てるか考えました。販路を拡大するにはファンを増やそうと、年に一度の交流会を企画し、実際に農産物を見て食べていただきます。今夏も170名を超す参加者が集まってくれました。参加者の割合は消費者と生産者半々くらいです。勉強したいという新規就農者にはきちんと技術を伝えて、多くの消費者とつながりをもってもらえたらと思っています。交流会開催前日までの意欲が、当日以降は新たな意欲に切り替わります。お客さまの反応が、本当に励みになるんです。
生産拡大には限界がありますが、やれる範囲のなかで理解ある消費者の方々に安全でおいしい作物を届けていきます。そして、自然農法・有機の圃場を次の世代まで長く残したいと思っています。

はまなす生産組合の商品
ミネラルボックス
農薬・化学肥料を一切使わず、土の自然力を利用して栽培した、有機JAS認定の新鮮な旬の野菜の詰め合わせセット。その時期に収穫できる、とれたて野菜を生産者任せで詰め合わせます。
「太陽・水・土 そして生命」消費者と生産者の交流会
毎年7月第2日曜日に開催。顧客のみならず、栽培体系を研究する生産者や新規就農者、業者にも積極的に情報を提供する。
①圃場見学会
「圃場を直接見て栽培環境や技術、農産物の安全性を確認していただきたい」という願いを込めて、2班に分かれて圃場を案内し、説明する。
②収穫体験
皮が赤と白の2種類のじゃがいもを収穫袋(5㎏ほど)に500円でつめ放題! おとなも子どもも土に触り、家族みんなで大興奮。
③交流会
有機野菜のBBQや白米、ゆでた枝豆やじゃがいも、大根の漬物、果物など、安全な食材を実際に味わえる。青森県産ホタテも!
④ミニコンサート
年間100本を超えるライブを行う、青森県生まれの盲目のシンガーソングライター・板橋かずゆきさんがゲスト出演して熱唱。(2016年 第23回 消費者と生産者の交流会)


