コンテンツへスキップ

カート

カートが空です

記事: たなかふぁーむ Farm Letter Vol.01

たなかふぁーむ Farm Letter Vol.01

たなかふぁーむ Farm Letter Vol.01

 土と創る.01 久留米にんにく(PDF版ダウンロードはこちらから)



にんにくに賭けて18年。田中秀樹の喜び


無農薬無化学肥料の貴重な九州産にんにく

 中国から九州に伝わり、四国や紀伊半島に広まっていったとされるにんにく。国産にんにくで最も有名なのは、青森県産の「福地ホワイト六片」だろう。青森県産にんにくは国内総生産量の約4分の3を占めている。にんにくは青森県以外では、香川・宮崎・岩手・大分・和歌山・徳島県などで生産されている。意外なことに、日本のにんにく生産量は世界第36位。世界の生産量のわずか約0・1%に過ぎず、約6割を輸入に頼る。そのほとんどが中国産だ。
  にんにくは完全無農薬・有機栽培が非常に難しく、同じ耕作面積でも収穫量が激減してしまうため、トップブランドの青森産でも数は多くない。
  農薬や化学肥料を使わないにんにく栽培に取り組んでいる福岡県久留米市の「たなかふぁーむ」では、掘りたての新鮮な生にんにくの出荷が5月から始まった。期間限定の生命力にあふれた旬の香りが魅力だ。乾燥にんにくや黒にんにくの自然本来の健康的なおいしさにも自信があるという。

左から、秀樹さんの母・八千代さん、研修生・吉武陸さん、田中秀樹さん、次女・詩歩さん、妻・小百合さん


謎が多いから、にんにくはおもしろい

【たなかふぁーむ 田中秀樹さん】


無農薬無化学肥料にこだわる理由

 嫁さんの父が慣行栽培でやっていたイチジクを、結婚を機に僕も手伝うようになりました。でも、気管支喘息のせいか、消毒の匂いで具合が悪くなってしまったんです。地元で一番イチジクの収穫量が多かった無農薬栽培の農家さんから、「甘やかしたら、人間と一緒で慣れてしまう」と教えてもらって、有機栽培を目指すことにしました。もともと、健康的な野菜や自給自足に興味があったんです。減農薬でイチジクを栽培した後、無農薬で化学肥料も使わずにうまくいきました。
  そのころ洪水があって、年代物のイチジクの樹がだめになってしまったので、思いきって抜きました。苗木からまた育てて生計を立てられるのは3年目くらいからですが、そんな余裕はありません。無農薬だと、野菜が病気になると収入はゼロですから、次に何を植えるか悩みました。農薬なしでも大丈夫な強い作物を探して、虫がつきにくいと評判のサニーレタスを最初に選びました。
 この辺の土は重粘土質で、レンコンで有名な佐賀の白石町の土壌と似ています。雨が降ったらべちゃべちゃになるけど、晴れて乾いたらコンクリートみたいに硬くなる。ストレスがかかって味が力強くなる根物が土に合うのかなと、次の作物の候補としてにんにくが浮かびました。


試行錯誤でたどり着いた「嘉定種」

 暖地系のにんにくの品種がいくつかあるなかで、白くて大きい「山東ホワイト十片種」を試してみましたが、病気が出やすく、無農薬では収穫できそうにありません。味も香りも弱い。  土地に合う品種を探した末に、病気に強くて味もいい「嘉定種」と呼ばれる八片にんにくにたどり着きました。にんにくの原種に近く、皮がほんのり赤くて小ぶりの品種です。疲労回復効果のある成分、アリシンがたっぷり含まれています。
  うちでは、堆肥も動物由来のものを極力使わず、海由来か植物由来のものを使っています。広葉樹皮のバーク堆肥は発酵完熟腐植がしっかりしていて、作物が栄養を吸収しやすいんです。きのこの菌床は雑草の成長を抑える効果があります。
  にんにくを収穫した後は、ヒマワリの種を蒔き、少し花がついたくらいで緑肥とともにしっかり土に混ぜ込みます。冬場に作付けするサニーレタスのリン酸吸収が高められ、豊かな土壌が作られます。


工夫を生かせるところが農業の魅力

 畝の中は手取りで除草するので、時間がかかるのが悩みの種です。背が高い分、根が下に伸びる草を水はけの悪い圃場に伸ばしたり、通気通水をよくしようともみ殼をすき込んだり、にんにくの薄皮を草にかぶせて抑えたりと、あれこれ工夫しています。通路の草は、芽摘み作業のときに千鳥足で歩いて踏みます。たまたま知り合った人とつながって、いいなと納得した方法は、どんどん取り入れて試してみます。裏の圃場で1列ほど、「福地ホワイト六片」を作ってみたこともあります。
 前から定植を手伝ってくれていた娘の詩歩は3年前に農業大学校を卒業しました。「自分たちで考えて、最初から最後まで工夫しながらやれるから、農業はおもしろそう」と、収穫作業を積極的に手伝ってくれることもありました。ありがたいですね。


周辺農家を有機の風に巻き込んでいく

 にんにくを始めて10年目、自家採種で7年目です。どんどん土地に合った固定種ができていたのですが、昨年の西日本豪雨で自家採種の種が約半数に減ってしまいました。有機栽培を始めた当初は、除草剤を使わないので、借りている農地の草取りが間に合わなくて、周囲から厳しい目を向けられたこともありました。有機が盛んな土地柄ではないので、最初はそのへんに苦労しました。人ときちんと関わっていかないとやっていけませんから。最近は、「田中くんの畑の近くは農薬が飛散しないよう、風がある日はヘリで防除するのをやめよう」と、有機に理解が生まれています。
  昨年の畑の面積は6反、今年は7反の予定です。にんにく農家も増えて、山東ホワイトと僕たちの作る嘉定種の二つの品種を合わせて20軒くらいになりました。自分たちの経験や試みていることは、地域の仲間とすべて分かち合います。僕たちに賛同して無農薬に変えてくださる農家さんが少しずつ増えているのがうれしいですね。みんなで力を合わせて有機の方向にいきたいと思います。


一つ一つ手掘りで収穫

 妻の小百合は、「機械で収穫すると、切断したり傷をつけたりして、にんにくがかわいそう」と言います。僕たちは一つずつ丁寧に手で掘ります。両親もにんにく作りを手伝ってくれます。
  佐賀の先生に教えていただいたり、年配のおじいちゃんたちから昔の知恵を学んだり、まだまだ勉強中です。一雨ごとに粒が大きくなって、前年よりしっかり硬いものが収穫できることもあります。
  健康的な野菜を食べて、僕の体調がよくなったように、安全安心な野菜を待つ多くの人に届けたいと思っています。だから、土地に合った作物をいかに味よく作るかを日々考えています。
  いまはにんにく1本で大きくなるのが夢です。にんにくを作っていて、楽しいんです。収穫前の3月から、そわそわした気持ちになります。5軒でも10軒でも一緒にがんばれる仲間ができれば、またそれからが楽しいんじゃないかと思って、まずはそこを目指してがんばります。



にんにくのヒント


油を使うと…有効成分を効率的に取り入れられます!
 ◎そのまま丸揚げに
 ◎肉や魚、ごはんなどの炒め物に

生のまま…料理に深みが増し、抗菌作用も
 ◎スライスして薬味に
 ◎ひとかけら擦って、タレやポン酢に
 ◎丸ごと漬けて、にんにく醤油に

その他…簡単調理で栄養抜群
 ◎アルミホイルに包んで炭焼きに
 ◎ラップに包んでレンジ蒸しに

〜 気になる匂いに 〜 りんごをかじると、酵素が匂いを分解して緩和します!


黒にんにくとは

発酵による糖質とアミノ化合物の化学反応で、抗酸化作用が強くなり、免疫力や抗癌作用が高まるといわれる。「糖尿病の父の血圧が安定するようになって、欠かさず食べてくれています」と小百合さん。最適な温度と水分調整を求めて20回以上の失敗を繰り返し、作り上げたという。


その他のファームレター

下田澤山ぶどう園 Farm Letter vol.04
岩手県

下田澤山ぶどう園 Farm Letter vol.04

岩手の山林に自生する野生種に惚れ込み、九戸村で誰よりも早く山ブドウの栽培化を始めた下田澤榮吉さんは、30年かけて珠玉の山ぶどうジュースを作り上げた。太陽の恵みに光り輝く果汁には天然の抗酸化成分であるポリフェノールが豊富で、その機能性は各種疾病や老化の予防に大いに期待されている。

もっと見る
瑞 宝 Farm Letter Vol.05
青森県

瑞 宝 Farm Letter Vol.05

  「生産調整が実施されても、この町は減作未達成で青森県からよく叱られました。よその町は田んぼの他にもあるけど、ここは水田しかない。米にこだわってきたんです」と話すのは、農薬・化学肥料・除草剤不使用で自然農法の米を栽培する、有限会社瑞宝の代表取締役・三上新一さん。

もっと見る