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記事: 瑞 宝 Farm Letter Vol.05

瑞 宝 Farm Letter Vol.05

瑞 宝 Farm Letter Vol.05

 土と創る.05 中里つがるロマン(PDF版ダウンロードはこちらから)



有機の先頭を全力疾走。三上新一の情熱


県も国も認める、自然農法への長年の貢献

 津軽半島のほぼ中央に位置する青森県中泊町。中泊町内の延長8979mを含み、津軽半島を南北に結ぶ「こめ・米 (マイ)・ロード」には、「農村地域の夢と希望をこめた農道、稲作 (米) 地帯を貫く農道、農村地域に密着した私 (マイ) の農道」という三つの意味合いが込められている。
  「生産調整が実施されても、この町は減作未達成で青森県からよく叱られました。よその町は田んぼの他にもあるけど、ここは水田しかない。米にこだわってきたんです」と話すのは、農薬・化学肥料・除草剤不使用で自然農法の米を栽培する、有限会社瑞宝の代表取締役・三上新一さん。現在は、水稲27、大豆45、小麦25、にんにく1・7ヘクタールで有機JAS認定を受けている (一部転換期間含む)。農産物加工施設も建設し、有機大豆をみそや豆腐、醤油、水煮大豆などに加工し、販売中だ。
  三上さんは2016年春、青森県内10人の褒章受章者のうちただひとり、仕事に励み、他の模範となる技術や実績を持つ人に贈られる「黄綬褒章」を受章した。

妻・百合子さんは加工と野菜、長女・裕恵さんは経理と発送を担当し、三上新一さんを支える


食べる人の安全を第一に

【瑞宝 三上新一さん】


大冷害で立証された自然農法の生命力

 平成5年、100年に1度あるかないかという未曾有の大冷害に見舞われ、青森県の稲作は全滅に近い落ち込みでした。中里町(現中泊町)も作況指数18という最悪を記録する中、私の圃場は例年並みの収穫量を確保したのです。慣行農法の圃場の稲は米粒のない「不稔」状態で緑色のまま立っていましたが、私の圃場の黄金色の稲穂は実り豊かに頭を垂れ、その差は一目瞭然でした。そのときに、「この作り方でいいんだな」と実感しました。ただあてがわれたものだけで育つと、稲自体が努力をしないから、寒さに負けます。自然農法の稲は生命力が強く、自分の力で育つから、冷害にも強いのです。
  このことを機に、自然農法が地域の農家から注目され、社会的にも評価されるようになりました。「うちの子どもがアトピーだから」「化学肥料を何も使わないから」と、仲間に入れて欲しいという地域の若手農業者たちが集まり、翌年には地元農家32戸で「中里町自然農法研究会」を設立、行政や県も見直してくれました。高齢化により、いまは人数が減りましたが、互いに支え合い、農業技術の向上や普及に努めています。


わずか5アールからの挑戦

 私はもともと小さい農家の長男でしたから、中学生の頃から当たり前のように農業を手伝っていました。中学を卒業した昭和37年に就農したのですが、当時は作業効率が第一で、いまでは使用禁止の強い農薬を使っていました。もともと蓄膿症だった私は農薬を撒くたびに具合が悪くなり、3日も寝込んで苦しい思いをしたものです。このまま農業を続けていけるかと自信がなくなり、悩んでいたときに、自然農法に取り組み始めました。
  とにかく化学薬品や農薬を撒かなければ自然農法だと、翌年にわずか5アールから試みましたが、技術も知識も機械も経験もなく、鍬と手作業で非常に苦労しました。当時は農薬を使わない農業など考えられず、初めの数年は雑草が生い茂り、収量も極端に少なく、周囲の目も冷ややかでした。何回も諦めようかと思いましたが、自分の体のことを考えると、やめるわけにもいきません。
  昭和44年に結婚した妻の百合子の実家も農家でしたから、仕事に理解があり、二人三脚で自然農法に取り組みました。しかし、当時のことを「いまのように除草機がなく、草はすべて手取り作業。結婚したときからほんとにたいへんで、私も若かったし、ついていけないと思うこともありました」と妻が言うくらい、苦労をかけたと思います。


土作り、苗作り、除草が重要

 昭和57年、この地域の区画整理が始まった頃から収量が安定し始め、自然農法の栽培面積を大きくしました。除草機を改造したり、堆肥作りに工夫を凝らしたりして、試行錯誤を繰り返すうち、少しずつ技術が向上し、昭和60年には10アール当たり480kgの収量を得るまでになりました。
  やっと軌道に乗り始めたかと思いましたが、翌年に妻が体調を崩しました。また、近隣の農家の子どもがアトピーで苦しむ姿を目の当たりにして、身体を作る農作物が身体を蝕んでいくことに疑問を持ち、稲わらと籾殻による土作りから本格的に自然農法に取り組みました。平成2年以降は、水稲の全面積で自然農法を実践しています。
  自然農法の大事なポイントは、土作り、苗作り、除草の3点です。なかでも土作りは重要です。土を畑のような状態にして、土壌の力を最大限に引き出します。有機農業と慣行農業の違いは、心をかけて作ったか、農薬と肥料で作ったかです。土を第一に、食べる人の安全を考えて作るのが自然農法です。消費者は安全なものを求めています。消費者が求めれば、生産者はいくらでも作ります。自然農法は手間もコストもかかりますが、それを理解してくださる消費者はありがたい存在です。


有機農業者の生活保障が必須

 農林水産省は有機農業の生産面積を1%まで増やしたい意向ですが、農業全体のわずか0・4%に過ぎません。これからは農業をまるで知らない都会の人が、斬新な発想で自然農法に取り組むべきだと思います。慣行農法に慣れている人たちは、農薬や化学肥料なしでは農業をやっていけないと思い込んでいます。
  土日は休み、しっかりとした社会保険で、老後の安定をきちんと保障するのが日本社会です。有機農業に携わる人に、サラリーマンよりむしろ豊かな生活を保障することで、新しい作り手を育てていかなければなりません。そういう形態でないと、やる人はいなくなります。逆に言うと、生活さえ安定すれば、若い人も農業に集まるはずです。なぜなら、農業は楽しいからです。
  研究を重ねながら手間をかけて取り組んできて楽しかったと感じています。妻は、「草取りはたいへんでしたが、がんばってきたから、いまがあります。元気で仕事ができることを感謝しています」と言ってくれます。好きで始めた道ですし、自然農法の先頭に立ってやっていきたいという想いがありましたから、苦労に思わないのです。


瑞宝の商品

つがるロマン
白米5kg、10kg 玄米5kg、10kg




大学の卒業証書が農家への第一歩。農業先進国の教育環境や意識の高さに衝撃

三上裕恵さん


  デンマークへの研修で有機農家を視察しました。デンマークでは高校卒業後、ホームステイや奉仕活動に1年ほど費やし、大学進学・卒業後に農家になる権利を得られるそうです。親から土地や建物、器具機材を購入するには大学の卒業証書をもとに銀行から融資を受けて親に支払い、経営者として農業を始めると聞き、驚きました。農家の長男だから継ぐのではなく、国や世間が認めて農家になれるのです。幼い頃から森の幼稚園などで自然や動物に触れる機会があり、命の授業も体験します。再生エネルギーへの取り組みなど、農業の意識が日本とはだいぶ違うことがわかりました。海外を見ながら有機を進めることも重要だと感じました。



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