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記事: 下田澤山ぶどう園 Farm Letter vol.04

下田澤山ぶどう園 Farm Letter vol.04

下田澤山ぶどう園 Farm Letter vol.04

 土と創る.04 九戸山ブドウ (PDF版ダウンロードはこちらから)


生命力に輝く山の女王。下田澤 榮吉の一獲千金


太古の時代から脈々と伝わる天然完熟山ブドウ果汁

 一般的なブドウの約3倍のポリフェノールとビタミンB6、4倍のカルシウム、5倍の鉄分、5・5倍のリンゴ酸が含まれ、栄養価が非常に高く、酸味も甘みも強いという特徴を持つ山ブドウ。日本の在来種で、縄文時代からワインやジュースにして飲まれていたそうだ。疲労回復、滋養強壮に効果的で、貧血にも良いといわれている。
  冷涼な岩手県は全国の約半分の生産量を占める日本一の山ブドウ産地。県北地方では、「さんと見舞い」(出産見舞い)として搾った山ブドウを瓶に詰めて贈ったり、風邪予防にお湯割りで飲んだりと、古くから愛用されてきた。
  岩手の山林に自生する野生種に惚れ込み、九戸村で誰よりも早く山ブドウの栽培化を始めた下田澤榮吉さんは、30年かけて珠玉の山ぶどうジュースを作り上げた。太陽の恵みに光り輝く果汁には天然の抗酸化成分であるポリフェノールが豊富で、その機能性は各種疾病や老化の予防に大いに期待されている。

 

探求心が未来を拓く

【下田澤山ぶどう園 下田澤 榮吉さん】

 

天然山ブドウとの偶然の出会い

 昭和56年、岩手県の九戸村では私がいちばん最初に山ブドウの栽培を始めました。  農家の長男だった私は中学校を卒業後、岩手県立の浄法寺経営伝習農場で1年間、牛飼いの技術と牧草の管理を学びました。いまブドウ畑となっている傾斜地は当時、山を開拓した牧草地で、多いときには15頭ほどの牛を放牧していたのです。昭和39年に酪農を始めた当初は好景気でしたが、全国的に牛乳がだぶつき、出荷制限をされた時期があり、パートで林業の仕事を始めました。
  ある晩秋の晴れた日、30年もののカラマツを間伐していたときに空を見上げると、大木においしそうな山ブドウが絡みついていました。そのころ山ブドウが豊作で、隣村では山ブドウを採って300万円稼いだ者がいるという噂がありました。採るよりも栽培したほうがいいと考えた私はそのとき、「ブドウをやる」と決意しました。それはそれは見事な山ブドウに一攫千金を夢みたのです。
  林業で一緒に働いていた同僚たちは、9月の末から10月ごろは松茸やシメジなどのキノコを昼休みに採りに行くのですが、私は立派な実がなる山ブドウの木を探し歩きました。霜が降りて雪が少しちらつくころ、葉っぱが全部落ちてしまったブドウの穂木を山で採取し、翌年の春に1500本ほど挿し木したところ、翌年のお盆のころに300本くらい芽が出ました。


夢と不安が交錯した4年間

 ブドウの実がつくまでには順調にいっても挿し木してから4年くらいかかります。経済的にも厳しく、家内から「やめたほうがいい」と言われましたが、あとにひけません。林業と酪農を続けながら、夢や不安が絡み合った4年間でした。
  ブドウができ始めたのは昭和60年くらいです。最初にできたとき、「やったこれ、山ブドウだ!」と嬉しかったですね。この地域は誰でも、家族が山から採ってきた山ブドウで作ってくれたジュースを子どものころに飲んだ記憶があるのですが、初めて自分でブドウジュースを作って飲んでみたら、もうおいしくて、すごかったですね。
  翌年にも実をつけたのですが、同じブドウとは思えない出来でした。そのときに、九戸村商工会の職員の方の紹介で、日本葡萄愛好会の澤登先生という山ブドウの大家にお会いする機会がありました。そこで初めて、山ブドウは自家受粉できないから受粉木が必要だと教えていただいたんです。
  その翌年は、ブドウの味に差が生じました。額にしわが寄るくらい酸っぱい完熟ブドウがあるかと思うと甘いものもある。そのときに、「人間と一緒で植物にもDNAがある」と澤登先生に教わりました。身長が高い、低いなどの個性が人間にあるように植物にも個体差があると知り、そこでまた大きな勉強をしました。やればどうにかなると思い、本から仕入れた知識だけで、まったく未知の分野に幼稚園児のように取り組んでいましたが、偶然にも素晴らしい先生にお会いできて、私は本当に恵まれていると感じています。
  10年目くらいからは、甘い実をつける木を選抜し始めました。1回選抜するのに、順調にいっても7年くらいかかります。1500本の中から3本の系統が選抜されました。もっとも糖度が高く、果汁も濃厚な実は、完熟したときに手でつぶしてみると、皮のいろいろな成分や色素で手首まで真っ赤に染まります。最高レベルの果汁がとれる系統の木は、ジュースと同じ「森の貴婦人」と名づけています。この系統は別格です。ここまでくるのに10年以上かかりました。



消費者の声を直接聞き、自然栽培へ

 ブドウを最初に植えたときは、農薬のことなどはあまり意識せず、収穫量が多ければいいなと思って管理をしていました。米農家の友だちから自然農法の研修に誘われ、軽い気持ちで行ってみたのですが、稲の指導が主でしたので、果樹は場違いかなと感じていました。
  平成8年から、山ブドウ狩りや直売を始めました。お客さんの要望で生食用のブドウも作り始めたところ、子ども連れの方に「うちの子はアレルギーなんですが、消毒はしていますか」と質問されたんです。そのころは最低限の消毒はしていました。形のきれいなものを作ったほうがいいのか、見た目は悪くても食べて本物の味の出るブドウを作ったほうがいいのか、あのときは迷いました。でも、自分は消費者に助けられる立場だから、完全無農薬や低農薬など、求められる方向を目指すことにしようと決めたのです。土づくりから取り組み、いまは化学肥料や除草剤などは使いません。


多様なリクエストに応えていくのが夢

 ブドウはデリケートな果樹だと肝に銘じていますし、やろうと思って取り組んだので、ブドウ栽培に苦労は感じないですね。
  いろいろなお客さんの声を聞き、要望に応えていくというのが私の夢です。「寒い九戸でこんな大粒のブドウができるのか」など、驚かれます。お客さんを含め、これまでたくさんのすごい人と出会ったなと感謝するしかありません。一攫千金の千金以上のものを皆さんからいただいています。面と向かっては言えないけれど、いつも黙ってついてきてくれる家内にも大いに感謝しています。


下田澤山ぶどう園の商品

天然山ブドウのストレート果汁 「森の貴婦人」(10月~) 600ml
農薬や除草剤、化学肥料を一切使用しない「自然農法」に力を入れ、品質を重視して栽培。完熟山ブドウを収穫後、一粒一粒手でもぎ取り、樽で数日熟成。手で搾汁し、栄養分を壊さないように低温殺菌処理。



大地と太陽の山ブドウ


 味覚や嗅覚などの感覚は、眼前のモノを摂食して大丈夫かどうかの重要な「生きのびるための機能」です。現代はおいしさを設計した食にあふれ、本来の味も分からないままに、むしろそういった食により健康を損ねている方も多く見受けられます。
  大地と太陽の味(成分)やチカラ(機能性)を内包した山ブドウ。「いにしえ」から森に生育する山ブドウを、安易な品種改良で性質を損ねることなく丁寧に選抜してきた、まさしく奇跡の山ブドウです。身体にしみわたるおいしさのあとには、心からの感動と敬意が湧き上がります。


宮田 恵先生
みやた整形外科医院 医師
シニア野菜ソムリエ
岩手県 盛岡市在住

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